里山で共に暮す オオサンショウウオ
オオサンショウオは日本の固有種で世界最大の両生類。このオオサンショウウオは国の特別天然記念物にも指定されています。岐阜県以西の本州・四国・九州の一部の主に河川の中域に生息していて、渓流だけではなく、小川や用水路の中でも見られることもあります。
両生類でありながら、変態後も陸に上がらず、ほとんどを水の中で生活していおり、カエルやサワガニや魚を食べます。寿命は他の生物に比べると、とても長く、100年以上生きるオオサンショウウオもいます。
大山周辺でもこの珍しい、生きた化石とも呼ばれるオオサンショウウオに出会うことができます。大山町名和の名和川の中域〜上域では、里山の近くにもかかわらず、このオオサンショウウオが生息していて、大山周辺の環境が、健全な田んぼの生態系を現在でも維持していることの証でもあります。オオサンショウウオは通常、山間部の渓流に生息していることが多いですが、大山町名和地区では、河川の上流部から河口付近までに生息しているという、非常に稀な環境です。この環境は全国的にも珍しいケースだそう。
「そもそも大山は、神がいる山として、人々に大事にされてきたという文化的な背景も、大山が開山1300年を迎える今日でもオオサンショウオが生息できているということの理由のひとつだと思います。」というのは、環境省中国四国地方環境事務所・大山隠岐国立公園管理事務所、所長の中山さんはおっしゃいます。
文化的な要因とは、そもそも大山は修験の山で、誰でも自由に出入りができる山ではありませんでした。現在では、誰でも楽しめる山ではありますが、2018年で開山1300年を迎えた大山は、それまで守られてきた自然や環境が、長い時間を超えて、現在のオオサンショウウオにとって好環境になっているのではないのでしょうか。
また「大山周辺のオオサンショウウオが生息している地域は、周りに何もないただの自然や山奥の河川という場所ではなく、皆さんが思っているより、皆さんが住んでいる里山の近くに生息しています。オオサンショウオは、特別天然記念物とはいえ、私たちの暮らしにとても身近で生きていて、共存している」そう。
中山さんも首都圏出身で、鳥取の魅力をこう語ります。「私が住んでいるのは米子ですが、都会に比べとにかく水が美味しい。コーヒーひとつ淹れるにも、水道水が美味しいんですよ。都会では考えられないですよ。その美しい地下水、水質、河川環境など、すべてがオオサンショウオにとって恵まれた環境なんです。大山周辺には、今でも健全な田んぼの生態系がある。どの要素もバランスよく存在しないと、この環境は守られません。」
私たちが、何気なく生活しているそばでひっそりと暮らすオオサンショウウオ。この豊かな環境に、ともに暮らす仲間として、多くの人にオオサンショウウオを知り、これからも大山の豊かな自然環境を守っていくのが、私たちの大事な役割です。