大山の新たな特産品を目指して  大山の自然薯

大山町の東側に位置する報国(ほうこく)地区。ここに自然薯を栽培している株式会社勇辰(ゆうたつ)農園があります。芝や梨などを中心に栽培しているこの農園、4年ほど前から自然薯の栽培を始め、大山町でも有数の自然薯の生産数を誇ります。

この農園で働く前田貴大(まえたたかひろ)さん(30歳)。3年前までは、サラリーマンとして大阪で働いていました。実家は大山町の中山地区。いわゆるUターンで実家のある大山町に戻ってきました。

前田さん。お父さんは漁師さん。

「サラリーマンしかやったことなかったので農業なんて考えてもなかった」という前田さん。社長からうちで働かないかと誘いを受けましたが、全くやる気はなく何度も断っていたそう。

「それでも何度も社長が声をかけて来るんですよ。これからは農業だって。この農園の将来の後継としても考えているって。最初は聞き流していたけど、熱く語る社長を見て、ああ、この人本気で自分を誘ってるんだなと思いました。」と笑う前田さん。知識も経験もゼロで農業の世界へ飛び込みました。

まず任されたのは、農園自体もまだ1年ほどしかやっていない自然薯作りでした。「自然薯と山芋の違いも知らなかった」という前田さんはあっという間に自然薯づくりの世界にのめり込みます。自然薯づくりは年間通して大変な作業の連続。まず3月に昨シーズンできた自然薯から種芋づくりが始まります。ビニールハウスで芽出しをし、桜が咲いた頃から手で一本、一本植える。この作付けの作業だけでも大変な姿が目に浮かびます、というと、「いやいやこの作付けのための準備が本当に大変なんです」と話を続けます。

「冬の間に波板トタンを圃場に植え込む作業が一番大変なんですよ。想像できないかもしれませんが…」という前田さん。え、トタンですか。なんでトタンですか。と尋ねると前田さんは丁寧に教えてくれました。「自然薯がまっすぐ傷つかないように育つために、種芋を植える所の下に敷くんです。トタンの上に栄養分がほぼない土を敷き詰めて、さらにその上にビニールで囲います。これは余計な水分や栄養分から芋を守るためです。」水分や肥料分を種芋は嫌がり、腐ったり、曲がったりする原因となるそうで、全ての種芋はこのような作業後に植える。聞けば、このやり方は山口県の自然薯組合の方に大山町まで来てもらい指導をしてもらったという。「大山で自然薯を作る人が最初はほとんどいなかったのでなかなか情報がなくて。会社自体も自然薯の生産は始めたばかりだったので、基礎の基礎から教えてもらいました。」

これが波板トタン。植え付けの種芋の半分量が必要なので、だいたい毎シーズン1000枚程度準備するそう。

前田さんの奮闘はこれだけではなく、このトタンの上に敷く土は真砂土と呼ばれる土を使うと指導では受けたけれども「いろんな土で作ってみようと思って川砂でも試してみたり。「川砂でやったときは、この土が白っぽいので自然薯も白いものが出来てびっくりしましたよ」と声を弾ませる前田さん。自身のアイデアや自然薯仲間から新しく得た情報を色々と試し、新しい発見をした時はほんと楽しいです、と言います。

まっすぐ伸びた自然薯。優しく丁寧に扱います。

1人で作業することが多いそうで「ついつい自然薯に話しかけてしまいます。曲がった自然薯になんでお前曲がっちゃったんだ〜!とか言ってます笑」

今までで自然薯づくりで一番嬉しかったことは何ですかと聞くと、「先日うちの自然薯を置いてくれている恵みの里の方から電話が来たんです。去年うちの自然薯を買ってくれたお客さんが今年はないのか?まだかって言ってるんだけどって。いや〜本当に嬉しかったですね。」生産者として消費者の声をなかなか直接聞く機会がないという前田さん。今後の目標は「まっすぐ伸びて、美しく大きい自然薯を作るってことじゃなくて、その先に食べてくれる人が喜んでくれないと自己満足で終わる。食べる人が、喜んで満足できる自然薯を作る、必要とされる自然薯を作る」ことだそう。これからお客さんの反応を直接感じることのできる自然薯市もやってみたい、自然薯が梨やブロッコリーに負けない大山の特産品になれるようにしたいと力強く語ってくれた前田さん。前田さんのみなぎる力が込められた自然薯、ぜひ一度お召し上がりください。

問い合わせ

大山自然薯組合 090-5374-7325(二宮)

【ここで買えます】

大山恵みの里 

大山町名和951-6

0859-54-6030