心が調う 座禅体験
大山寺参道沿いにある、宿坊・観証院山楽荘。大山寺門前に位置し、自然の美しさ、厳しさを感じられる歴史深い宿坊です。
ここで体験できる座禅。最近若い女性たちを中心にとても人気があります。
皆さん、「座禅」というとなんだか厳しくて辛そう…というイメージがありませんか。私も取材に行くまでは、なんだか少し緊張していました。
今回案内してくださったのは、山楽荘の清水豪賢住職。清水さんはとても物腰が柔らかく、山楽荘の周りに茂る木々のようにとても穏やかで落ち着く雰囲気の住職です。
まず座禅とはどんなものか、清水さんより説明がありました。「今、大山寺では「ととのふ」をテーマに様々な活動をしています。この「ととのふ」という言葉は座禅の調身・調息・調心という言葉からきているんです」。
座禅をしたことはありますか?と聞かれたので、ないということ、座禅は厳しそうなイメージでとても緊張していることを伝えました。すると清水さんは「山楽荘での座禅は正座ではなく、辛いものではありませんよ。」とおっしゃられました。
まず初めに清水さんの座禅の心構えなどの説明があります。
「座禅は心の中を無にし、無念無想の世界に入ること。これがとても難しい。この修行が座禅です。この座禅の基本となるのが先ほど言いました『調身・調息・調心』です。」
この『調身・調息・調心』は次のようなことをいうそう。
調身(ちょうしん)
姿勢を正し、足を組み、腰を入れ座ること
調息(ちょうそく)
腹式呼吸で、ゆっくりと時間をかけて息を吐き、お腹がふくらむまでゆっくりと吸い込むこと。
息を吐くときに意識することが大切。
調心(ちょうしん)
上の二つがきちんとできるようになれば、雑念や自ずから消え心が整うことになること。
私が「棒でバシンとやられる印象がありますが、あれはどういう時に叩かれるのですか」と尋ねると清水さんは笑いながらこう答えてくださいました。
「警策(けいさく)のことですね。私たち天台宗では警策はご本人が望まれた時だけに行います。突然、後ろからバシっと叩いたりはありませんよ。」と聞いて一安心。
この山楽荘での座禅は天台宗の教えにのっとり、呼吸が乱れたり、姿勢が乱れたり、雑念が頭の中に浮かんだりしたら重ねた手を合掌にして頭をかがめる。これが警策をお願いする合図となるそう。
このような説明が終わると早速、座禅が始まります。
座禅が始まると音は自然の音のみ。普段では感じないような微かな風の音や小さな鳥のさえずりが聞こえ、目をゆっくりと閉じると、自然の中に身を置いているような気分になります。呼吸に意識をおき、心の中で数を数えます。時折、頭の中には雑念が舞い込み、何も考えない、ということは簡単そうで難しいな、とまた考えながら数を数えることにに心を持っていきます。普段ならそう意識しない清水さんが歩く時の床の軋む音が、とても大きな音に聞こえ、なかなか無の境地には程遠い時間。先ほどの説明を思い出し、手をほどき、合掌に変え、頭をかがめる。すると清水さんがやってきて、左右の肩を2回ずつ叩いてくれました。痛みは全くありません。このことで不思議とすっきりし、またリセットして座禅に戻ります。
「終わりです」と静かに清水さんが言います。あっという間の時間でした。
「考えていたより無になることは難しかったです。」というと清水さんはとても面白いことを教えてくれた。
「無にならなきゃと思うより、頭に浮かんだことを別の角度から見てみることが大切なのです。」
不思議と頭はすっきりし、忙しい毎日から離れ、このような新しい世界を見ることも面白い。新しい角度で見つめ直す。そのことにより身体が調い、息が調い、心が調う。
非日常を楽しむ旅の途中で自然の中に身を置き、自分を見つめ直す。皆さんもぜひご体験ください。