私たちを守るブナの森
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天然記念物ダイセンキャラボクと並び、大山のシンボルといえばブナ。
このブナの森は西日本最大規模と言われ、観光客にも大人気のスポットです。
春は新緑、秋は黄葉、冬は雪景色。季節季節に合わせた様々なアクティビティがあり、多くの人を魅了します。
このブナの森には長い歴史と、それを守ってきた人たちの歴史があります。
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山登りが大好きで、全国各地の山を登ってきた。
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当時の守る会の集会。横手道脇のブナの森の様子がこの写真に残されている。
今回、お話を伺ったのは、県内屈指の安産の神様で有名な一宮神社、前宮司でもある中嶋宏さんです。中嶋さんは宮司の仕事と共に長年高校の教師として活躍されていました。高校では物理を教えるとともに、大好きな山登りを生徒と楽しむ山岳部の顧問でもありました。
大山の登山者の無秩序なマナーやゴミが散乱されていることを目の当たりにした中嶋さん、「このままでは大山が死んでしまう」という大きな危機感が生まれました。県内の高野連の山岳部の顧問の先生たちに呼びかけ、「大山のゴミは持ち帰ろう」というルールが出来上がり、登山者に呼びかける運動が始まりました。この運動を始めたのが「大山の自然を守る会」でした。
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様々な運動や署名活動を通して多くの人に自然の大切さを呼びかけていたそう
また昭和30年台頃から大山の観光において、ゴルフ場や別荘地の開発が増え、ブナ林がどんどん伐採されていきます。そして昭和40年頃にはブナ林の伐採はピークを迎え、「大山の自然を守る会」は伐採反対の署名活動や啓蒙活動をしました。「ブナ林を壊すだけでいいのか。観光と自然のバランスが保ててこその大山なのではないかといつも考えていましたよ。」と中嶋さんは言います。
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現在のブナの森。若い木も見られる。
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当時のブナの森。中嶋さん自身も子供の頃からブナの森を友達と走り回っていた。
ブナ林があると昆虫や鳥がたくさん住む。母なるブナの森。大山に生きる人たちが一同に口を揃えて言う、「大山のおかげ。ブナの森のおかげ。」という言葉。「春になり、ブナも芽吹いてくる時期になって、ぜひ幹に耳をつけてみてください。水が流れてくる音がしますよ。ブナの木はとにかく保水力がいい。幹も根もよく水を吸っています。1年中、大山から美味しい水が流れ出すのはこのブナの森のおかげ。雨が降って何十年もかけて水がゆっくりと流れ出す。今、振り返っても当時の(反対)活動は必要だったと思いますよ。」
豊かな水はただ自然から湧き出たものではないということを知り、私たちのためにブナが守ってくれる、そしてそのブナを守るのは私たちということを忘れてはならないということを多くの人に知ってほしいですという中嶋さん。いつまでも大山の恵み、美しい大山が続くよう私たちはこの言葉を忘れないようにしなければなりません。
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