大山そば

九州出身の私は「そば」というものにあまり馴染みがありません。というかそばなんてどこで食べても味の違いがあまりわからない。きっと美味しいそばに出会ったことがないのでしょう。

ところがこちらの「大山かおりそば」を初めて食べたとき、私は驚きました。「かおりそば」は名の通り、そばの香りを嗅ぐことができます。そもそも「そばに香りがあるなんて考えたことがありませんでした」と言うと、「そうでしょう?でもね、そばにはちゃんと香りがあるんです」と話すのはこの店の運営に携わる『大山かおりそば普及する会』の小村満さんです。

この『大山かおりそば普及する会』は2012年3月に発足。お店のある大山町坊領(ぼうりょう)地区を中心に休耕田となった田んぼでそばを育てることから始めました。地元の農家さんたちの協力のもと、農薬は使わず2町ほど栽培しているそう。

小村さんは昔市役所で働く公務員でした。若い頃からそばが大好きで日本全国食べ歩いていたそうです。50代になり「なかなか自分が美味しいと思うそばに出会えないから、そば打ちをはじめちゃった」小村さんのお話を聞けば聞くほど、そばが好きで好きでたまらないという深い愛が感じられます。もう、といったら失礼ですが、70歳のおじいさんはまるで少年のようにそばへの情熱を語ります。「甘み、コシ、香り、すべてがバランスよく育ったそばの実はこの大山のきれいな水、寒暖の差、黒ぼくの土壌で成立している」そう。

私が香りの他に驚いたのは、そばの麺がうっすらとしたモスグリーンだったこと。これはそばがらを取り除き、苦み、えぐみがきちんととられている証拠。この色であることは、小村さんいわく「余分な味がなく清楚な味」だというしるしです。

このかおりそばで最も特徴的なのはそばの食べ方です。メニューはざる、かけ、おろしとシンプルなメニューが並ぶ中、ひとつだけ聞いたこともないメニューがありました。それがかおりそばの看板メニューでもある「塩そば」です。こちらのお店ではざるそばを塩で食べることをおすすめしています。「塩で食べることにより、そば本来の香りと甘みが一層と引き立つんです」と小村さん。塩でそば!?と驚きながら口にすると、そばの甘みが口の中にふわりと広がりました。この塩も、小村さんがいろんな塩で試食した結果、かおりそばの味を最も引き立てたのが藻塩だったそう。もちろん特製の麺つゆで食べてもおいしい!塩、麺つゆどちらも楽しみながら、あっというまに大盛りをぺろりと食べてしまいました。

「そば作りほどこだわったものはないよ」と笑う小村さんが作るかおりそば。小村さんのそば作りは今後もどんどん進化していくに違いないでしょう。

【大山香りそば】

鳥取県西伯群大山町坊領437-9

0859-53-4806

土曜日・日曜日のみ営業

11:00~14:00

駐車場 有