地域と人をつなぐ まぶや

大山町上市にあるコミュニティスペース「まぶや」。昭和3年に建てられた馬淵邸を改装し、現在は地域の人たちが集う場所として、多くの人で賑わいます。

長らく空き家だった、築100年近くになる元医院だった馬淵邸。馬淵家は代々、医者の家系で、昭和3年から平成6年まで、開業されていました。和風建築の細部に、洋風の要素がうまくあわさった建物。当時としてはとても先進的な建築で、当時の匠の技が随所に見られ、建築物としての魅力も大きい「まぶや」。大山町を主に活動拠点とする若手起業家やアーティスト、漁師などのUIJターン者などによる「築き会」というグループが中心となり、この建物を後世に残したいという想いから、この建物の所有者との交渉から改装まで行い、コミュニティスペースとして再生しました。これが「まぶや」の始まりです。

医院と住宅の機能を併せもつ建築物。医院時代の待合所であった土間や、診察室や入院用の部屋だった広間も残されています。

2014年からは、「まぶや」のある大山町逢坂地区を拠点とする、地域自主組織「やらいや逢坂」の活動拠点となり、コミュニティスペースとしてより活発な交流拠点となっています。そして、この「まぶや」には地元の人同士の交流だけではなく、移住サテライトセンターやギャラリー、カフェも併設されており、県内外、国外からも多くの人が訪れ、たくさんのつながりが生まれています。

現在この「まぶや」を運営する「やらいや逢坂」事務局の小林このみさんも移住者のひとりです。「私は夫の実家が、大山で、このまぶやの近くなんです。結婚して、夫の実家に一緒に住むことにしました。夫はUターン、私はIターン?ですかね。ひいおじいちゃんから私の子どもたちまで4世代同居していて、とってもにぎやかですよ」と、楽しそうに家族の話をしてくださいました。

やらいや逢坂事務局の小林このみさん。3児の母であるとともに、やらいや逢坂の子育て支援も行う。

「このまぶやもそうですが、昔からのつながりも大事にしつつ、新しいつながりも受け入れる。お客さん自身、そんなマインドを持った人たちが、とても多くて、このまぶカフェは毎日にぎやかですよ。」

まぶやの中にある「まぶカフェ」。ここでは、地元の人たちが、約束もなく毎日集っては、お茶をしながらおしゃべりをするそう。私が訪れたのは、平日の午後2時前。すでにたくさんの人たちがコーヒーを手に、おしゃべりをしていた。

毎日カフェに通うお客さんも多い。「こないと、心配されちゃうけん」

「あんた、どこの人ね?」と気さくに話しかけてくれ、私もおしゃべりに参加しました。「楽しいですね」とこのみさんに言うと、「私自身も、ここに来て、メンタル的にとても変わりました。それまでは、どちらかと言うと、人見知りというか、なんというか…笑。でも今はいろんな人と、壁を作らず、おしゃべりできるようになりましたよ。」と嬉しそうです。そんな話をしていると、地域の人が、県外のお友達を連れて、まぶやに来店。楽しそうに、そこにいた地元客たちとおしゃべりタイムが始まりました。

「県外のお客さんなんかも結構いらっしゃいます。アーティストインレジデンスと言って、県外、海外のアーティストが県内に滞在して作品制作をする取り組みの受け入れなどもしているので、地元のおじいちゃん達も外国の人たちともどんどんおしゃべりしてますよ。もちろん中山弁(この地域は旧中山町。現在は大山町)でどんどん話しかけてます。」というこのみさん。

この「まぶカフェ」では、一日店長制度があり、毎週木曜日はランチを食べることができます。ランチがない日でも、コーヒーや軽食があり、コーヒーは200円で、なんとおかわり自由!福光焼のマグカップで提供されます。

この他にも、蔵を改装した蔵ギャラリーでは、月替わりで展示があり、町内外の作家の作品を観ることができます。

建物としての魅力はもちろん、そこを作り上げる様々な人たちと、そこに集ってくる人たちの交流の場である「まぶや」。旅する人と、暮らす人の交流の場としてもぜひみなさんに訪れてほしい場所です。

まぶや(やらいや逢坂事務局)

鳥取県西伯郡大山町上市29

10:00〜17:00

火・水休み

電話 080-1946-2614